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母ががんで入院したとき、「通帳、どこにあるの?」と聞けなかった私。

そこから、暮らしと気持ちを見つめ直す時間が始まりました。
この記事では、親の通帳管理をきっかけに始まった“やさしい生前整理”について、実家の片づけや家族との関わり方を通して見えてきたことをリアルにお話しします。
「実家を片づけなきゃ」と思っても、何から始めればいいかわからない──そんな方にとって、すこしでも参考になればうれしいです。
親の通帳が気になった日が、“生前整理”のはじまりだった


通帳の話が聞けなかった日と、あのときの気持ち
母ががんで入院したとき、医療費や生活費の支払いは、私が立て替えていました。
本当は「通帳ってどこにあるの?」と聞きたかった。
けれど──その一言が、どうしても言えなかったのです。
母は、自分の体調のことで精一杯でした。
気丈にふるまっていたけれど、不安がにじんでいたのは私にも分かっていました。
そして私自身も、心のどこかで「今こんなことを聞くなんて」とためらい、言葉を飲み込んでしまったのです。



お金のことは、今じゃない。
まぁ、いいか。
そう思って、私は黙って支払いを済ませました。
ふり返ると、そのときが最初の“きっかけ”だったのかもしれません。
お金の話も、暮らしの話も、いつか向き合わなきゃいけない──そんな思いが、心のどこかにずっと残っていました。
ATMで気づいた、母の変化とわたしの不安
治療が落ち着いて、少し日常が戻ってきた頃のこと。
母と一緒に出かけたスーパーの帰り、ATMに立ち寄った母が、振込操作に手間取っていました。
画面のボタンを見つめながら、何度か「戻る」を押して──後ろに人が並びはじめると、母の表情には焦りが見えていました。



あれ?…間違えたかも。
戻って、もう一回…。
「私が代わりにやった方が早い」そう思ったけれど、母の“まだ自分でやれる”という気持ちもわかっていたから、何も言えませんでした。
けれどその帰り道、胸にふとした不安が残りました。



また何かあったとき、ママ大丈夫かな?
そのとき、私はようやく──あの通帳のことも含めて、きちんと向き合うべきときが来ているのかもしれない、と思ったのです。
代理人カードをきっかけに「これから」を考えはじめた
数日後、落ち着いた時間を見計らって、私は母にこう話しかけました。
この前、ATMちょっと大変そうだったよね。
また体調悪いときがあっても、私が振込できるようにしておこうか?
そうやって切り出して、私は「ゆうちょ銀行の代理人カード」という仕組みを紹介しました。
代理人カートとは、家族が本人の代わりに通帳の操作をできるカードです。
母は、最初はちょっと戸惑った様子でしたが、「あのとき焦ったのよね」と笑って、こう言ってくれました。



それがあれば、お願いしやすくなるわね。
手続きは一緒に窓口へ行って、一時間ほどで完了。
数日後、無事に代理人カードが発行され、振込や引き出しを私が代行できるようになりました。





これで、もう焦らなくて済むね。



うん、私もほっとしたわ。
「お金のこと」を話し合えたことで、何かがひとつ、ととのったような気がしたのです。
▶ ゆうちょ銀行の代理人カードを作成したときの体験談はこちら。


当時は、“通帳のことが片づいただけ”のつもりでした。
でも──あとから思えば、この一歩が「実家の片づけ」や「やさしい生前整理」につながっていたのだと思います。
「片づけよう」は言いにくい──だから“探しやすく”から始めた


「生前整理」という言葉が母の表情を曇らせた
代理人カードで通帳管理の不安がひと段落したあと、ふと気になり始めたのが、「通帳のほかにも大事なものって、どこにあるんだろう?」ということでした。
印鑑、保険証書、医療費の領収書──聞いてみると、母自身も「あれ、どこだったかしら」と言う場面が何度かありました。
これはいざというとき困るかもしれない。
そう思い、なんとなく「生前整理って、元気なうちにやるといいらしいよ」と口にしたときのことです。
母の表情が、ふっと止まりました。



まだそんな話、早いでしょ。



あ、ごめん…。
私にとっては、“いまを整える前向きなこと”のつもり。
でも、母にとっては、「もうそんな年なのね」と思わせるような言葉だったのかもしれません。
「探しやすくしようか?」と伝えると、母が動き出した
それ以来、「生前整理」という言葉は使わないようにしました。
代わりに、「探しやすくしようか?」「必要なときに困らないようにまとめておこうか」と、あくまで“暮らしをラクにする”という方向で声をかけるようにしたのです。
最初は「そんなの、いつでもできるわよ」と笑っていた母も、「私が後で探すことになるかもしれないから」とやさしく伝えると、「それなら…」と納得してくれるようになりました。



言い方ひとつで、伝わり方はこんなにも違うんだな…。
笑いながら進めた書類整理──私の手描きラベルで
まずは、通帳や印鑑、保険証、医療関係の書類など、“使っているもの”を中心に、一緒に見直しを始めました。
いきなり全部出して整理、なんてことはせずに、「今日はこの引き出しだけね」と、小さなステップで始めたのがポイントだったと思います。
書類の仕分けには、100円ショップで買ったクリアファイルを使いました。
それに、私が手描きした「医療」「銀行」「保険」のラベルをぺたり。
絵心ゼロな私が描いた動物のイラストに、母はくすっと笑ってくれました。



ウサギ?牛?なにこれ〜(笑)
笑いながら進める整理は、ただの片づけじゃなく、母と私の心がちょっと近づいたような──そんな気がしました。
「片づけよう」じゃなくて、「探しやすくしようか?」
その一言が、母の気持ちを動かしてくれたんだと思います。
「残しておかなければ」と「残しておきたい」はちょっと違う


残しておかなければならない「大切なもの」
書類整理を進めていく中で、まず取りかかったのが、母の日常生活に関わる“必要なもの”たち。
通帳、印鑑、保険証、診察券、医療費の明細書──どれも、暮らしに必要不可欠な「残しておかなければならない大切なもの」です。
「これは病院に持っていく書類ね」
「これはもう解約した保険だったわ」
そんなふうに、一枚ずつ確認しながら、ラベルをつけたクリアファイルにまとめていきました。
一度仕分けると、母自身も「どこにあるか」がわかり、私も何かあったときに慌てずにすみます。
実用的な書類を“見える化”することは、親の安心と、子どもの安心を同時に生み出すのだと感じました。
残しておきたい「大切なもの」
必要なものをひと通り整理できたある日、母が押し入れを開けて、静かに言いました。



これは、連れていきたいの。



処分してもいいんじゃないの?
母が指さしていたのは、私のお雛様と弟の五月人形でした。
実家の引っ越しが決まり、荷物を減らす必要が出てきた中で、服や台所用品はあっさり手放した母が、この人形の前では立ち止まったのです。
服は捨てても、人形は残したいんだそうです…。
新居を下見したとき、母は押し入れの奥を見ながら言いました。



ここなら入る。やっぱり、持っていこう。
その言葉を聞いて、私は気づきました。
これはモノじゃない。
母にとっての記憶であり、祈りであり、“心に残る大切なもの”だったんですよね。
大切さの“違い”に気づいて、母との会話が変わった
私たちは、片づけや整理というと、「使う・使わない」「要る・要らない」で判断しがちです。
でも、母との時間の中で、私はこう思うようになりました。
大切なものには、「機能として必要なもの」と「気持ちがのこるもの」がある。
どちらも残す価値がある。
でも、その意味や“重さ”は、まったく違うのです。
この違いに気づいてから、私は母に尋ねるようになりました。



これは何のときのもの?
どんな思い出があるの?
話してくれるたびに、母の声はやわらかくなり、私自身も、「ただの片づけじゃない時間」を過ごしているように思えました。
「必要なもの」だけを残すのではなく、「残したい気持ち」も尊重する。
それが、“やさしい生前整理”なのだと実感した瞬間でした。
実家の片づけで感じた、“無理をしない”という選択肢


婚礼ダンスを解体しようとした母のがんばり
人形を新居へ持っていくと決めた母ですが、そのためにスペースを空ける必要がありました。
問題は──私が生まれる前から実家にあった、大きな婚礼ダンス。
中に詰まっていた着物や布団は整理できたけれど、残ったのは、タンスそのもの。
とにかく大きくて重たい。



大工の娘だし、自分で解体できるわよ。



え?ほんとにやるの?
そう言って、母はのこぎりを持ち出しました。
板を1枚外すのに何十分もかかり、汗をぬぐいながらつぶやいたひと言──



もう、二度とやらない…(笑)


私も思わず笑ってしまいましたが、同時にこう思いました。
“自分のことは自分でしたい”…その気持ちを大切にしたい。
でも、“無理はさせたくない”というのが、娘としての本音でした。
「これはプロに頼んだ方がよかったかも」と思った話
タンス1つを動かすだけでも、想像以上に時間も体力もかかります。
「これは、業者に頼んだ方がよかったかもしれないね」と、母自身が口にするほどでした。
最近は、不用品回収をしてくれる業者がたくさんあります。
しかも、一括見積もりサービスを使えば、複数の業者から金額と対応を比較できるので、費用感もつかみやすく、安心して依頼できます。
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大きな家具を解体して、運び出す──それを「自分でやろう」とする親の気持ちもわかりますが、
“無理をしない”という選択肢も、十分にやさしい判断だと思います。
「ありがとう」と気持ちを添えて手放すお焚き上げ
家具や日用品の片づけが進む中で、次に悩んだのが、古いお守りや手紙、ぬいぐるみなどの「気持ちのこもったもの」たち。
「これはどうしようかな……」と、母がためらう場面が何度もありました。



捨てるのはなんだか申し訳ないのよね。



その気持ち、めちゃめちゃわかるわ。
そんなときに役立ったのが、「お焚き上げサービス」でした。
母も「それなら気持ちよく手放せるかも」と前向きになれましたし、私自身も、古いお守りや記念品に「ありがとう」と声をかけながら、包みました。
生前整理は、モノを手放すことじゃなく、気持ちを整えること。
そう感じられたのは、この経験があったからです。
家族と進める生前整理──無理に巻き込まなくてもいい


弟に言われた「まだ早いんじゃない?」
実家の片づけや書類整理を進めながら、私は弟にもLINEで様子を伝えていました。
「代理人カードを作ったよ」
「書類はクリアファイルで整理してる」
「婚礼ダンス、処分することになったよ」
でも最初は、どこか他人事のような返事が返ってくることもありました。



まだ元気なんだし、そんなに急がなくてもいいんじゃない?
たしかに、母は日常生活を普通にこなしている。
けれど、そばで見ている私には、体力や記憶力など、ほんの小さな“変化”が見えてきていました。
一緒に暮らしている人と、たまにしか会わない人。
その“温度差”があるのは当然──だけど、ちょっと寂しかったです。
巻き込むのではなく、“知っておいてもらう”
そこで私は、考え方を少し変えてみました。
「全部いっしょにやらなくていい」
「でも、“知っておいてもらう”ことは大事」
進捗を報告するようなLINEは、続けました。
でも、手伝ってとは言わない。
ただ、“情報を共有するだけ”にしたのです。
すると、弟の反応も少しずつ変わってきました。



わかった、ありがとう。手続きしてくれて助かるよ。
この程度のやりとりでも、家族として“共有している”という安心感が生まれたように思います。
生前整理は、全員でガッツリ取り組まなくてもいい。
小さくても、情報を“わかち合うこと”が大切なのだと感じました。
離れていてもできる──高齢者見守りサービスのこと
弟は仕事と育児で忙しく、日常的に母の暮らしを見ることができません。
だから、「最近どう?元気?」と私に聞いてくることもしばしばありました。
私が間に入って伝えることもできるけれど、ずっとそれが続くのも、私にとってはちょっとした負担になってきていました。
そんなときに知ったのが、高齢者向けの見守りサービスです。
センサーやロボットなどを使って、日常の様子がわかるしくみで、離れていても、“今、元気かな?”がわかるだけで、安心感がまったく違います。


弟にもこのサービスのことを共有すると、「それ、すごくいいね」と前向きな反応が返ってきました。
“生前整理”とは、モノのことだけじゃなくて、“家族のつながり”を見直すきっかけにもなる──そう感じた出来事でした。
生前整理は、これからの暮らしをととのえる時間


生前整理アドバイザー講座で学んだこと
2025年、私は「生前整理アドバイザー2級」の資格を取得しました。



講座の中で印象に残っているのは、こんな言葉です。
「いらないものを捨てるのではなく、大切なものを集めましょう」
それを聞いた瞬間、「ああ、私が母とやってきたことは、これだったんだ」と思いました。
通帳、保険証、印鑑──
人形、手紙、昔のアルバム──
“必要なもの”と“残したいもの”の整理は、ただの片づけじゃなくて、母のこれからの暮らしを整える時間だったのだと、心から思いました。
小さな片づけが、大きな安心につながった
あのとき、「通帳どこ?」と聞けなかった日から始まった、小さな一歩。
それが、ここまで家の中を整え、母との会話を増やし、気持ちの安心にもつながっていきました。
- 通帳や印鑑が、すぐに取り出せる
- 書類がまとまり、探さなくていい
- 思い出の品をどうするか、話し合えた
- 家族で「もしも」のことを共有できた



どれも、劇的な変化ではありません。
でも、“ちいさな安心”が積み重なることで、日々の不安がすっと軽くなったのです。
自分の「大切なものを集める」から、やさしく始めよう
「生前整理って、なんだか重たい言葉」と思う方も、いるかもしれません。



でも、無理に“整理”しなくても大丈夫です。
最初の一歩は、もっと軽やかでいい。
「これ、必要なときにすぐ出せるようにしておこうか」
「どこにあるか、私も知っておいた方がいいかもね」
そんなふうに、声をかけるところから。
そして、“大切なもの”を少しづつ集めていく。



それが、やさしい生前整理の始め方です。
【よくある質問Q&A】生前整理や実家の片づけ、どうしたらいい?
- 生前整理って、やっぱり「片づけ」から始めるべき?
-
いいえ、「片づけ」から始める必要はありません。
まずは「大切なものを集める」という意識から始めてみてください。
- 「生前整理」という言葉は親にどう伝えるべき?
-
「生前整理」という言葉に抵抗を感じる方もいるので、「探しやすくしておこうか」「あとで困らないようにまとめておこうか」など、前向きでやさしい言い方に変えると受け入れてもらいやすいです。
- 不用品が多くて手がつけられません。どうすればいい?
-
無理にすべて自分で片づけようとせず、不用品回収業者に見積もりを取るのがおすすめです。
一括見積もりサービスを利用すれば、費用も比較しやすく、安心して依頼できます。
- 気持ちのこもったモノはどう手放せばいい?
-
お守りやぬいぐるみなど「捨てにくいモノ」は、お焚き上げサービスの利用がおすすめです。
感謝の気持ちを添えて見送ることで、気持ちよく手放すことができます。
- 家族が協力してくれません。どうしたらいい?
-
無理に巻き込もうとせず、LINEなどで進捗や情報を共有するだけでもOKです。
小さな報告の積み重ねが、家族の安心感と連携につながります。
【まとめ】生前整理は「片づけ」よりも、“思いをととのえる時間”
- 生前整理は、親の“今”に寄り添う「これからの暮らしの準備」
- 「片づけよう」より「探しやすくしようか?」が、やさしい合図
- 無理せず頼れるサービスを活用するのも、大切な選択肢
生前整理というと、どうしても「物を捨てる」「荷物を減らす」というイメージが強いかもしれません。
でも本当は、これからの暮らしを見つめ直し、“大切なもの”をていねいに選んでいく
──そんな“思いをととのえる時間”でもあるのだと思います。
親が元気なうちだからこそ、思い出話をしながら、笑いながら、少しずつ進められる。
それは、家族にとっても、自分にとっても、かけがえのない時間です。
「片づけよう」ではなく、「探しやすくしようか?」



そんなやさしい声かけから、始めてみませんか。
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