親の医療費や介護費を、実際に自分が負担する立場になってみて、それまで「分かっていたつもり」だったことが、少しずつ、違って見えるようになりました。
私は医療職として総合病院で勤務していますが、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格も持っています。
制度やお金の仕組みについても、それなりに理解しているつもりでした。
それでも、「家族として、医療費や介護費を支える側」になってみると、知識だけでは整理しきれない場面に、何度も立ち止まることになります。
気持ちの問題、家族との距離感、割り切れなさや、迷い。
頭では分かっていても、現実は、もうちょっと複雑でした。
この記事では、要支援1の親を持つ子どもとして、実際に医療費・介護費を負担している立場から、そのとき感じたこと、考えたことを、体験談としてまとめています。
同じように、親を支える立場にいらっしゃる方が、ご自身の状況を少し整理したり、気持ちを落ち着けて考えるための小さなきっかけになればうれしいです。
30代の自分と今の自分|医療費への向き合い方がこんなに変わった

30代の頃、私が医療費について考えていたのは、あくまで自分自身の医療費のことでした。
働いて収入がある「現役世代」としての視点です。
医療職として26年間働き、これまで医療系FPとして制度やお金の情報発信もしてきました。
だからこそ、「制度を知っていれば大丈夫」「きちんと備えていれば、必要以上に不安になることはない」…そんなふうに、どこかで思い込んでいたのだと思います。
「自分の医療費」は想定できるものだった
当時の私にとって、医療費はあくまで「備える対象」でした。
- 働いて収入がある
- 体調の変化に、自分で気づける
- 必要なときに、自分で判断して病院に行ける
こうした前提があるからこそ、医療費はある程度見通しの立つ支出で、日常的に強い不安を感じるものではなかったんです。
「親の医療費」には現実味がなかった
一方で、当時の私にとって「親の医療費」は、とても遠い存在でした。
「いつかは考えないといけないけれど、今ではない」

そんなふうに、少し先の未来の話として捉えていたのだと思います。
「そのときが来たら考えよう」
そう思いながら、どこかで「親の老い」から目をそらしていた部分もあったのかもしれません。
支える立場になって初めて見えた、別の重さ
実際に、親の医療費や介護費を自分が負担する立場になってみて、その「重み」や「不確かさ」は、まったく違う形で感じられるようになりました。
- いつまで続くのか分からない
- 金額の増減が予測しづらい
- 精神的な負担も、静かについてくる
それは、自分の医療費とはまるで別物でした。
生活の中に、少しずつ、でも確実に入り込んでくる終わりの見えない支出と向き合う感覚です。
「知っていれば安心」は半分だけ正しかった
制度の知識があったからこそ、助けられた場面も確かにあります。
けれど、実際に直面してみると、「知っている」だけでは足りませんでした。
本当に問われるのは、
「どう対応するか」
「どうやって、今の暮らしを守るか」
という、もっと現実的な部分だったのだと思います。
医療費との向き合い方は、年齢や立場が変わるだけで、ここまで違って見えるものなのか。



今は、そのことを、日々実感しています。
親のために頑張りすぎないために|医療・介護と向き合うバランスの取り方


親の医療費や介護費を、実際に支える立場になると、
「自分がなんとかしなきゃ」
「できる限りのことはしてあげたい」
そんな気持ちが、自然と湧いてきます。
私自身も、最初は「私が頑張れば、なんとかなる」…そう思っていました。
でも、気づかないうちに、自分の生活や気持ちが、後回しになっていた時期もありました。
「親のために動くこと」と「自分をすり減らすこと」は別
親を支えるというのは、ときに「終わりの見えないマラソン」のように感じます。
頑張り続けていると、自分の体調や気持ちが、少しずつ追いつかなくなっていく…。
あるとき、「このまま続けていたら、自分のほうが先に倒れてしまうかもしれない」
そう感じたのをきっかけに、無理のない関わり方を、少しずつ探すようになりました。
「できること」と「できないこと」をはっきりさせる
私が実際に取り入れたのは、本当に小さな工夫です。
- 通院の付き添いは、親が電車で行く病院だけにする
- 必要な情報は抱え込まず、ケアマネジャーさんに相談する
- 疲れている日は、意識的に「親のことを考えない時間」をつくる
これだけでも、気持ちに少し余裕が生まれました。
全部を完璧にやろうとしない。



それだけで、続けやすさが変わってきます。
「私しかいない」と思い込まないことも大切
介護や通院のサポートをしていると、
「自分がやらなきゃ回らない」
「人に頼るのは申し訳ない」
そんな気持ちになることもあります。
でも、実際にはプロの手を借りたほうが、うまくいく場面もたくさんありました。
制度や支援に頼ることは、
“ラクをすること”ではなく、
長く支え続けるための知恵なのだと思います。
自分にしかできないことと、他の人や制度に任せていいこと。



それを分けて考えるだけで、気持ちはずいぶん軽くなりました。
「一緒に暮らしてない」ことに、負い目を感じなくていい
母は、私の家から車で1時間ほどの場所で、一人で暮らしています。
最初は、「離れて暮らしていて、本当に支えられているのかな」



そんな不安を感じることもありました。
でも今では、離れているからこそ見えること、できることもあると感じています。
定期的に顔を見に行ったり、行けないときは見守りサービスを使ったり。
そうすることで、小さな変化に気づけたり、本人の本音や不安が、自然と見えてくることもありました。
ちょうどいい距離感や関わり方は、人それぞれ違って当たり前。
そう思えるようになってから、以前よりも、穏やかな気持ちで親と向き合えるようになった気がしています。
【実体験】親の医療費・介護費、実際いくらかかってる?内訳とリアルなお金の話


親の医療費や介護費について、「実際、どのくらいかかるの?」というのは、これから向き合う方にとって、いちばん気になるところかもしれません。
私自身、親を支える立場になるまでは、「高額になる場合もある」という知識はありました。
ただ、それが毎月、当たり前のように出ていくお金としてこれほど重みを持つとは、正直、想像できていなかったと思います。
最大で月3万円、現在は月1.5万円ほど
母は介護認定を初めて受けたときは「要介護1」の認定でしたが、体調が落ち着いてきたこともあり、現在は「要支援1」として支援を受けています。
がん治療中の医療費は、月に3〜5万円ほどかかっていましたが、今はおおよそ月1.5万円前後に収まっています。
毎月かかっている主な費用内訳
- 診療費・薬代:定期的な通院と処方薬の自己負担分
- リハビリ費用:週1回の整形外科通院
- デイサービス利用料:週1回(要支援1)
- 福祉用具レンタル料:置き型手すり、自立する杖
- 交通費:電車代・バス代、必要に応じてタクシー代など
この出費は「何か特別なことがあったとき」ではなく、ごく日常の中で当たり前にかかる費用です。
意外と負担に感じたのは「付き添いのために仕事を休むこと」
金額そのもの以上に、精神的・時間的な負担として大きかったのが、「付き添い」の問題でした。
乳がんと肺がんの手術前は、それぞれ検査と診察、術後も月1回の受診にはできるだけ母に付き添うようにしていたため、そのたびに仕事を休む必要がありました。
その後、股関節に人工関節を入れる手術も受けたため、母は10年間で3度の入院・手術を受けたことになります。
- 病院が混んでいる日は、1日がかりになることもある
- 仕事の都合上、半年先まで検査予約が入ることも多く、日程調整が難しい
「親のために必要なこと」と分かっていても、自分の生活との折り合いに悩む場面は、やはりありますよね。



職場の上司、同僚が協力してくれたので、本当に助かりました。
家計のやりくりと制度の活用で支え続けてきた
母が75歳になるまでは、私の健康保険の扶養に入っていました。
がんの治療中、医療費が高額になったときは、負担を抑えるための制度を利用しました。
高額療養費制度は、あらかじめ「限度額適用認定証」を用意することで、窓口での支払いを自己負担限度額まで抑えることができるんです。
現在は、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、原則として限度額適用認定証を別途申請しなくても、自己負担限度額が自動的に適用される仕組みになっています。



いつも、最新の情報を確認するようにしていますよ。
高額療養費制度については、協会けんぽのページにわかりやすく説明されています。
また、毎年の確定申告では、医療費控除も欠かさず行ってきました。
通院の交通費や薬代、リハビリ費用などを含めて、「思っていたより使っているな…」と感じる年ほど、少しでも戻ってくるようにと、ゆるく続けています。
医療費控除は、領収書を集めたり、交通費を計算したりと、正直、手間がかかります。
それでも、「これは自分を助ける仕組みなんだ」と思うことで、続けやすくなりました。



最近では、スマホからでも簡単に確定申告できるようになりました。
控除の対象や計算方法など、国税庁の医療費控除ガイドも役立ちます。
また、スマートフォンからの確定申告方法は、以下の特設ページで詳しく紹介されています。
「これくらいかかるもの」と思えるようになるまでに、時間がかかった
最初の頃は、「どうして、こんなに毎月出ていくんだろう」
そんな戸惑いや焦りもありました。
でも今は、
「これは生活の一部」
「これからも続いていく支出」
そう捉えられるようになって、気持ちの面でも、家計の面でも、少し備えやすくなっています。
医療費の支払いは1つのクレジットカードにまとめ、たまったポイントを、エステやマッサージなどの自分のリフレッシュ代に回すなど、気持ちに余裕を持つための工夫をしています。



自分のために使える、小さなご褒美の感覚です。
知っておくだけで違う|ムダに抱え込まないための情報とのつながり方


実は私は、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格のほかに、ケアマネジャーの資格も持っています。
取得したのは、今から15年ほど前。
介護現場に携わったことはありませんが、介護保険の仕組みや、「どんなときに、どこへ相談すればいいか」といった基礎的な部分は知っているつもり。
それでも、いざ自分の親のこととなると、知識がそのまま役に立つ場面ばかりではありませんでした。
制度の名前を知っていても、実際にどう動くかは、親の体調や生活状況、本人の気持ちによって大きく変わってきます。
「分かっているはずなのに、迷う」
そんな場面に何度も直面して、資格があっても、当事者になると見え方は違うということを、あらためて実感しました。
「制度を覚えておく」より、「思い出せる」ことが支えになった
医療費や介護費がかさんだとき、毎回すぐに正解の制度が頭に浮かぶわけではありません。
それでも、「たしか、負担を軽くする仕組みがあったはず」
そう思い出せたことで、気持ちが少し落ち着いたことがありました。
制度は、完璧に理解していなくても大丈夫。
- 高額になったら、何か使える制度があるかもしれない
- 申請や手続きは、あとからでも確認できる
- ひとりで判断しなくていい



そう思えるだけでも、医療費や介護費と向き合うハードルは、少し下がりました。
情報は「検索」より、「人につながる」ほうが早かった
最初の頃は、「これって対象になるのかな?」「うちの場合はどうなんだろう?」と、迷うことも多かったんですよね。
今振り返って思うのは、ネット検索だけで完結させるより、地域包括支援センターなど、公的な相談窓口でつながったほうが正確で早いということです。
実際に相談先を探すとき、「どこに連絡すればいいのか分からない」とき、窓口になるのが親の住む地域を担当する地域包括支援センターです。
厚生労働省のページから都道府県別に確認することができますよ。
「今すぐ介護が必要」という状況でなくても、「これから先のことを少し聞いてみたい」



そんな段階で、相談して大丈夫な場所なんです。
医療と介護は、「組み合わせて使っていい」
母は現在、「要支援1」の認定を受け、医療と介護、両方の制度を組み合わせながら生活を支えています。
- 介護保険:在宅生活を続けるためのサポート
- 医療保険:治療や身体機能の維持
役割が違うからこそ、どちらか一方だけで頑張らなくていい。
福祉用具やデイサービスなども、自費で抱え込まず、「使えるものは使っていい」と思えたことで、家計の面でも、気持ちの面でも、余裕が生まれました。
「何から始めたらいいか分からない」ときの最初の相談先として、地域包括支援センターがあることを知れたのも、大きな安心材料でした。



「なんでもっと早く、介護認定受けなかったの!」とケアマネさんに言われてしまいました。
「少しだけ知っている」ことが、不安を小さくしてくれる
医療費や介護費は、ある日突然ドンと来るというより、生活の中で、静かに積み重なっていく支出です。
だからこそ、
「全部分かっていなくてもいい」
「使える制度があるかもしれない」
そう思えているだけで、いざというときの不安は、ずいぶん違ってきます。
「そのときが来たら考える」でも、もちろんいい。
でも、今より少しだけ知っておくことで、自分を守れる場面が、きっと出てくると感じています。
今、何をしておけばいい?|40〜50代からのチェックリスト


ここまで読んで、
「大変そう…」
「うちはまだ大丈夫だけど、いつかは…」
そんな気持ちが、少しでも浮かんだなら、全部やろうとしなくて大丈夫です。
今の自分にできそうなところから、ひとつでも確認できれば、それで十分。



そんな気持ちで使ってもらえたらと思います。
□ 親の“今の状態”を、ざっくり把握している
- どんな持病があるか、なんとなく分かっている
- 定期的に通っている病院や診療科を把握している
- 服薬の有無・通院頻度を、ざっくり説明できる
👉 完璧に言えなくても「だいたい分かる」状態を目指すだけで十分です。
□ 医療費・介護費が「月にどれくらい」かかっているか意識している
- 毎月ゼロではない、という感覚を持てている
- 「急に高額になることもある」と知っている
- 生活費とは別枠の支出だと認識している
👉 まだ具体的な金額が分からなくても、「続いていく支出」だと分かるこが大切。
□ いざというときの“相談先”をひとつ知っている
- 地域包括支援センターの存在を知っている
- 病院に相談員(医療ソーシャルワーカー)がいると知っている
- 市区町村に、介護や福祉の窓口があると分かっている
👉 どこにあるかを確認して、「困ったら、ここに聞けばいいかも」と思い出せれば十分です。
□ 自分が“全部やらなくていい”と、少し思えている
- 付き添いや手続きに、限界があると分かっている
- 人や制度を頼ることは、悪いことではないと思えている
- 「私しかいない」と思い詰めすぎていない
👉 これは、気づけただけで、もう一歩進んでいます。
□ 自分の生活と気持ちを守る余白を、意識している
- 親のことを考えない時間があってもいいと思えている
- 疲れたときに休む選択を、自分に許している
- 小さなご褒美やリフレッシュを、大事にしている
👉 親を支えるためにも、自分の暮らしをすり減らしすぎないことは、とても大切です。
このチェックリストは、「できていない自分を責める」ためのものではありません。
- 今はここまででいい
- これは、まだ先でいい
- ここは、すでにできている
そうやって、今の立ち位置を確認するためのものです。
少しずつ、その都度、整えていけばいい。
40〜50代の今は、「完璧な準備」よりも、立ち止まって考えられる余白を持つことが、いちばんの備えなのかもしれません。
まとめ|完璧な準備はいらない。今の立ち位置を知ることからでいい
親の医療費や介護費と向き合うことは、ある日突然、はっきりと始まるものではありません。
気づいたら、少しずつ支える場面が増えていて、少しずつ、考えることも増えていく。
多くの人が、そんな形でこの問題に向き合い始めるのだと思います。
だからこそ、
「今から全部準備しなきゃ」
「ちゃんと分かっていない私はダメかも」



そう思う必要は、まったくありません。
- 親の体調を、なんとなく把握している
- 医療費や介護費が、続いていく支出だと知った
- 困ったら、相談できる場所があると分かった
それだけでも、もう十分な一歩なんです。
親を支えることと、自分の暮らしを守ることは、どちらかを犠牲にする話ではありません。
無理をしすぎないこと。
抱え込みすぎないこと。
それが、結果的に長く、穏やかに親と向き合っていく力になります。
40〜50代の今は、完璧な準備を目指す時期ではなく、「立ち止まって考えられる余白」を持つ時期。
できるところから、少しずつ。そのペースで大丈夫です。
これからも一緒に、人生の後半戦を、無理なく整えていきましょう。
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