葬儀の生前準備をはじめる理由
「自分の最期は、自分で決める」
私たちがいつか迎える最期のとき。その準備を生前に始める人が増えているそうです。
その理由の一つは、自分自身の意志を反映した葬儀を準備しておくことで、自分らしい別れの場を創り出せるから。
また、家族が突然の訃報に慌てることなく、ゆっくりと故人との最後の時間を過ごるようになるからです。
仕事中、70代~80代の患者さんといろいろな話をするのですが、
子どもに迷惑をかけないように
- お寺さん(菩提寺)に頼んである
- (営業の人に根負けして)公園墓地にお墓を建てた
- 納骨堂を申し込んだ
など、供養のはなしを聞くことがよくあります。
病院に長く勤めている(お局している)ので、人生の大先輩が受診に来たついでに、近況報告をしてくれることが多いんですよ。
でも、葬儀の準備してる人は案外いないなと思っていたら、母からこんなはなしが。
近所に住むMさん(80代)。
家族に迷惑をかけたくないので、元気なうちに娘さんと葬儀屋の打ち合わせに行ってきた。
事前に「家族葬」と決め、どんな祭壇にするのかなど決めてきたとのこと。
Mさんの影響を受けた母は
「家族葬」っていいかもね。ママにはまだ早いけど。
慌てる必要ないけど、どんな葬儀がいいかちょっとずつ考えてみたら?
母には元気で長生きしてほしい。
でも、70代半ばにもなれば、何があってもおかしくないですからね。
私が経験した3つの葬儀
私がこれまで経験した家族の葬儀は3つ。
町内会長をしていた祖父が亡くなったのは、私がまだ学生だったとき。
葬儀会場の町内会館のまわりには花輪がたくさん。
親戚・友人・知人・町内の方などが弔問に訪れた、いわゆる「一般葬」でした。
エプロンをつけてお手伝いに来てくれた方も多くて、いい意味でも悪い意味でもにぎやかだった記憶があります。
昔の葬儀は、亡くなったことを親戚や友人、地域などに広く知らせ、多くの人で故人を見送るのが一般的でしたからね。
今から8年前、祖母が亡くなったときは、家族と近い親戚が数人参列し、近所のセレモニーホールで「家族葬」。
祭壇はとてもコンパクトでしたが、葬儀社のスタッフがテキパキと対応してくれたおかげで良い葬儀になりました。
そして、父が亡くなったとき、コロナに感染していたので、選ぶまでもなく「直葬」。
僧侶も読経も戒名もない葬儀。オプションの「別れ花」を棺に入れたけれど、納得できるとは言いがたいものでした。
一言でいうと、さびしい葬儀。
父の希望で「直葬」だったなら、また違っていたかもしれません。
子どもの立場で考えたとき、母の葬儀はどんな形式がいいのか…
「一般葬」は規模が大きすぎるし、コロナ禍で増えた「一日葬」は、これから先どうなのか。
「直葬」はシンプルで料金は安いけれど、私がまた不完全燃焼で終わりそう。
やっぱり「家族葬」がいいのかな。
子どもが、親の葬儀準備をサポートすることは、家族の絆を深め、お互いをより深く理解する機会となるはず。
そのためにも、母に葬儀の形式の違いを伝えられる知識を身につけたい。
いざ、「家族葬」のリサーチ開始!
「家族葬」が過半数超え
家族葬とは、家族や近い親族など、葬儀に参列する人を限定して執り行う葬儀のこと。
とはいえ、実際は家族に限らず、本当に来て欲しい人、送ってもらいたい人に連絡し、その人だけに来てもらうのが家族葬。
一般葬と比べて、故人との最期の時間をゆっくり、静かに過ごすことができます。
また、家族葬は人数などを限定するので、状況が把握しやすいのも特徴のひとつ。
たとえば、参列者が前もってわかれば、広い会場・飲食・返礼品など、余計に準備をする必要がなくなりますからね。
その結果、費用を安く抑えることができます。
祭壇など良いものを選べば、その分コストがかかるので、必ずしも家族葬=安い、というわけではありません。
また、コロナウイルスの影響で大規模な集まりを避けた結果、「家族葬」の選択を後押しし、2022年は「家族葬」が過半数を超えています。
ただし、コロナ禍でなければ、「一般葬」を希望していた方が44.0%というデータがあり、今後は一般葬を選ぶ方も増えるかもしれません。
とはいえ、今後はさらに送る方も送られる方も高齢になり、「小さめの葬儀」が主流になっていくのは間違いありません。
行った葬儀の形式 | 2020年 | 2022年 |
---|---|---|
一般葬 | 48.9% | 25.9% |
家族葬 | 40.9% | 55.7% |
一日葬 | 5.2% | 6.9% |
直葬・火葬式 | 4.9% | 11.4% |
次は、「家族葬」を依頼する葬儀社についてリサーチしてみます。
この続きはまた次回に!
>>【葬儀の準備】これからの新常識!納得のいく葬儀社を選ぶための3ステップ
【知っトク終活】葬儀の形式まとめ
今でこそ「家族葬」とは…なんて偉そうに書いていますが、終活ガイドになるまでは、葬儀に種類があるなんて知りませんでした。
「〇〇葬って【葬】がつくもの多すぎない?」
「樹木葬は葬儀じゃないのに、なんで【葬】ついてるの?」
こんな感じ。
やはり、納得のいく選択をするには、ある程度の知識を身に着けておくことは必要ですね。
葬儀形式を十分理解しないまま契約してしまうと、納得のいかない葬儀になるかもしれません。
やり直しのきかない葬儀で、それは絶対に避けたいですよね?
そこで、おもな4つの形式と行う内容をまとめてみました!
次に、形式別の特徴とメリット・デメリットを解説していきます!
一般葬
通夜・葬儀・告別式を行い、家族・親族・友人・職場の人・地域の人など幅広い人が多数参列する葬儀です。
- 大勢の人が参列し、故人を偲ぶことができる
- 社交的な場として、遺族と参列者が交流できる
- 葬儀会社によるサポートが充実している
- 参列者が多いため、準備しなければならないことが多い
- 他の形式に比べて、費用が高額になる
- 遺族にとって、参列者への挨拶や対応が負担になる場合がある
家族葬
通夜・葬儀・告別式を行い、主に家族・親族・一部のごく親しい友人などで行う小規模な葬儀です。
- 決まった形がないので、生前の希望に沿った葬儀にすることもできる
- 参列者の対応に追われないため、看護などで疲れた家族の体をいたわることができる
- 気兼ねなく、最後のお別れができる
- 年配の方々の中には快く思わない人がいる
- 葬儀に呼ばなかった人へ配慮する必要がある
- 葬儀後に、自宅まで弔問に来られることがある
葬儀が終わってから、お焼香上げにたくさん来られるようなケースでは、家族葬はオススメできません。
なぜなら、同じ日に決まった時間に来るわけでもなく、自分のタイミングで来られる。
日常生活を取り戻そうとしているのに、ひっきりなしに人が来るため、家族の負担になってしまうことも。
このようなことが予想ができるのなら、一般葬を選んだ方がよいのかもしれません。
内容は同じでも、参列者が30人までなら家族葬、それ以上なら一般葬となることが多いです。
一日葬
通夜をせず、葬儀・告別式・火葬までを一日で行う葬儀です。
- スケジュールの調整がつきやすい(日帰りも可能)
- 参列者が多くなりすぎないため、遺族にとって負担が少ない
- 葬儀費用を抑えることができる
- 葬儀期間が短いため、参列者が出席できない場合がある
- 菩提寺の方針によっては、実施できないこともある
- 葬儀の流れが慌ただしく、お別れの時間が足りないことも
- 参列者の人数が限られる
- 拘束される時間が短い
- 宿泊する必要がない
などの理由で、コロナ禍では3密を避けられると、急速に需要が高まりました。
コロナウイルス感染症がインフルエンザ感染症と同じ第5類になったため、今後は減少していく可能性が高いです。
直葬・火葬式
通夜・葬儀・告別式などは行わず、火葬だけで見送り、家族と近親者のみで行います。
- 葬儀会場を準備する必要がない
- 通夜ぶるまいなどの飲食費がかからないため、葬儀費用を抑えられる
- 時間の融通が利くため、火葬場の予約が取りやすい
- お別れの時間は、火葬場の炉の前で5~10分程度
- 菩提寺がある場合、納骨を断られることがある
- 遺族が後々後悔することがある
葬儀社の方のお話では、火葬場のゴールデンタイム(人気の時間)は午後早めの時間。
なぜなら、一般葬、家族葬、一日葬は午前中に葬儀・告別式を行ってから、火葬場に移動する流れになるから。
これらの儀式がない直葬は、時間に縛りがないため午前中の火葬が可能です。
私の父は直葬だったため、希望日の朝9時から予約が取れました。
直葬と火葬式は呼び方は違いますが、同じものです。
費用のめやす
葬儀費用は、参列者の人数、葬儀を行う地域、葬儀の内容などにより異なります。
家族葬は一般的に、参列者が家族や親族などに限られるので、葬儀会場の使用料や飲食・接待費をおさえることができます。
ただし、家族葬=葬儀費用が安くなる、というわけではないので注意が必要です!
葬儀の形式 | 参列者数 | 費用のめやす |
---|---|---|
一般葬 | 50~100名 | 約150万8500円 |
家族葬 | 5~30名 | 99万5000円 |
一日葬 | 5~15名 | 30万~50万 |
直葬・火葬式 | ~10名 | 15万~25万 |
葬儀は百人百様!費用はあくまで、めやすです。